2020年度、小学校でプログラミング教育が必修化しました。21年度には中学校で、22年度には高等学校で情報教育が強化・必修化されます。
今の子供の親は、黒板とノートというアナログツールを使ってきた世代です。プログラミング教育とはなに?家庭ではどんなことを準備しなくてはいけないのか?といった不安があると思います。
うちの子はまだ園児ですが、小学校にあがる前にプログラミング教育をさせた方がいいのか不安でした。
この記事ではそういった不安を解消するために、プログラミング教育の内容と家庭でできる準備について紹介していきます。
- 家庭でのプログラミング教育の準備がわからない親
- プログラミング教育でどんなことをするのか知りたい人
- プログラミングの習い事はさせた方がいいのか知りたい人
子供2人を育てる親として、エンジニアの観点で調査した内容を紹介していきます。
どうしてプログラミング教育が導入されたのか?
プログラミング教育は、有識者会議を経て2017年に小学校指導要領が公示され、2020年度に必修化されました。まず、どういった背景があったのか見ていきましょう。
急速な情報化社会の発展
プログラミング教育は、これまでも総合的な学習の時間を通して、教育されてきました。
しかし近年、情報化社会が急速に発展し、それに伴い人々の生活や仕事に変化が現れました。
スマートフォンは2010年には10%の普及率だったものが、2018年には80%程度まで普及しています。電車などを見回すと、ほとんどの人がスマートフォンを持っていますね。
今後は、このようなICTと呼ばれる情報通信技術が活用される生活は当然となり、ありとあらゆる仕事でプログラミングが必要とされる時代が到来することが予測されています。
事務仕事でも、大量のデータ入力・整理などをプログラミングで解決できれば、スピーディな業務が実現できます。すでにこのような技術はRPAと呼ばれ、実用されつつあります。
つまり文系も理系もすべての仕事でプログラミング必要とされることになります。こうしたICTの成長・高度化によって、IT人材の需要が高まっています。
AIとロボットの普及
また、AIやロボットが進歩しつつあり、10~20年後には既存の仕事の約50%がAIやロボットに置き換わると言われています。例えば、タクシー・バスの運転手、レジ仕事、銀行や証券会社の窓口、スポーツの審判、秘書や会計などが挙げられています。
その反面、技術の進歩で新たな仕事も登場しています。例えば、Webデザイナー、データサイエンティスト、ドローン操縦士などです。
こうして環境は急激に変化しており、この変化に対応できる人材を育成するためプログラミング教育が必要となっています。
世界ではプログラミング教育が普及
日本では、スマホが学生に普及していますが、こうしたデジタルデバイスを勉強や宿題には利用せず、ゲームや動画、SNSがほとんどです。2015年の調査で、日本ではICTの勉強・宿題への利用率は72か国中最下位という結果でした。
イギリスやロシアといった国ではすでにプログラミング教育は普及しており、日本は出遅れています。
さらに日本は偏差値志向のため、一定の学力を持つ人材を量産するという点では適していますが、急速に変化する未来へ対応しきれていないという現実があります。
実際、東大出身という人でも、仕事現場では使い物にならないということがよくあります。その場で、問題に合わせて創造的な問題解決能力を持つ人材が求められています。
アメリカでは、プログラミング教育促進運動「Code.org」というものがあり、ゲイツ氏やザッカーバーグ氏といった著名人もプログラミング学習の重要性を述べています。
友だちと集まって、何億という人が日常生活の一部として使うモノを作る。想像するだけですごいことです。ちょっと怖いけれど素晴らしいんです。
「Code.orgより」Facebook マーク・ザッカーバーグ氏
たとえばあなたの夢がレーシングカーの運転手でも、野球選手でも、建築士でも、あらゆるジャンルがソフトウェアによって大きく変えられています。
「Code.orgより」Dropbox ドリュー・ヒューストン氏
プログラミング教育ではどんなことを学ぶの?
プログラミング教育の3つねらいと育む3つの力
文部科学省のプログラミング教育のねらいは次の3つです。
- プログラミング的思考を育む
- コンピュータが身近な問題解決に利用できることに気付かせる
- プログラミング教育と他の教科を連結させ理解を助ける
プログラミング教育は、プログラミングという科目が増えるわけではありません。各教科を通じてプログラミング的な考え方を学ばせることで、次の3つを身につけることが、プログラミング教育となります。
- 問題解決力(問題を解決するための必要な手段を考える力)
- 論理的思考力(自分が考えることを順序だてて組み立てる力)
- 創造力(なにかを作り出す力)
プログラミング的思考をはぐくむ、NHKのおすすめ番組「テキシコー」についてはこちらの記事で紹介しています。
各科目の中でプログラミングを学ぶ
プログラミング教育は算数や理科といった科目の中で行われ、プログラミング自体は学びません。
決してプログラマーやエンジニアの育成を目的としていません。このため、プログラミング言語については学びません。今後すべての職業に必要なプログラミング的能力を育むことを目的としています。
だたし、2021年には中学校で情報教育が強化され、2022年には高校で情報Ⅰという科目が必修化されます。これらの中では、ネットワークや情報セキュリティ、データベースといった高度なことについて学ぶことになります。大学入試センターもコンピュータを利用した試験を開発していることを発表していますので、将来大学入試に必要な能力になります。
家庭でなにか準備が必要?
何を購入したらよい?
なにしろ初めてのことなので、なにを用意したらいいかわからないですよね。
公立学校に関しては、特別な準備は不要です。学校や自治体がパソコンやタブレットを用意してくれます。
私立学校に関しては、パソコンやタブレットを購入する必要があるかもしれません。学校の指示に従うのがよいでしょう。
その他に家で勉強する環境を整える必要があります。まずはインターネット環境の整備が必要です。思い立ったらすぐにパソコンを使えるようにしておけば、子供が自発的にプログラミング学習することができます。
もしこれからパソコンを用意するなら、持ち運びができるようノートパソコンがオススメします。今後塾などに通う場合もノートパソコンなら利用できます。
親はどうしたらよい?
家庭で学習する場合、親が教えなければならないかと考えるかもしれませんが、親が先生になる必要はなく、重要なのは子供がプログラミングに興味をもてるようサポートすることです。
興味を持たせるには、楽しむことが1番です。まずは簡単なことからはじめて、達成できる少し先を示し、達成感を味合わせるといいでしょう。
子どもはどんどん自由にアイディアを出してきます。決して否定せずに子どもの試行錯誤を見守るようにしましょう。
子どもにプログラミングを習わせるべき?
まずは自宅学習で興味を持たせる
最近はプログラミングの塾・スクールがいくつもあります。
ただ説明している通り、プログラミング教育はプログラミング自体を学ぶわけではないため、学校で学ぶ内容と、塾・スクールで学ぶ内容は異なります。
まずは家で学習させてみて、興味を持つようなら塾・スクールに通うのがよいかと思います。家での学習方法が分からない場合は、塾・スクールに通うというのもよいでしょう。
自分でアプリを作りたい!本格的にプログラミング言語を学びたい!という場合に、プログラミングを本格的に学ぶ場合に通うものが塾・スクールと考えてよいでしょう。
またUdemyやProgateといったオンラインの教育もあります。お手軽に始めるならオンライン講座もよいと思います。Udemyについてはこちらの記事で紹介しています。
塾・スクールに通うメリット
1つ目は体系立てて教育してくれる点です。
独学の場合、自分の得意な内容、興味のある内容ばかりに取り組む傾向があります。全体をまんべんなく学ぶことが出来ます。
2つ目は講師に質問できる点です。
算数や理科などと違い、プログラミングには答えがありません。自分で解決するしかなく、解決できずに諦めてしまうことが考えられます。塾・スクールには講師がいますので、疑問をぶつけて、一緒に解決することができます。
3つ目は同世代がいる点です。
他の教科にも言えますが、切磋琢磨することで刺激になりますし、モチベーションを継続することもできます。
塾・スクールのデメリット
デメリットもあります。
1つ目は近くに教室がない場合がある。
どんな教科でも同じですが、近くにないと通うことが難しいですよね。毎回車で送り迎えだと親の負担が大きくなってしまいます。
2つ目は月謝が高いことです。
後ほど相場を紹介しますが、数万円の月謝がかかります。教材費が別でかかる場合もありますので注意が必要です。
塾・スクールではどんなことを学ぶ?
主にアプリコースとロボットコースがあります。
アプリコースでは、ゲームなどを作成してプログラミングを学びます。インベーダーゲームのように、ビームがあたったらキャラが消えるようなゲームを作るイメージです。そして習ったことに自分のアイディアを追加して、オリジナルのゲームを作成することが出来ます。これを繰り返すことでスキルを身に付けます。
ロボットコースでは、速度センサーや赤外線センサーを使って、白線の上を走行するライントレースカーや対戦ロボットを製作します。効果が目に見えるので、達成感を味わうことができます。
塾・スクールの費用は?
週1回の授業で1~2万円が相場です。
オンラインスクールの場合、通常の店舗型よりも費用が安くなりますので、安く抑えたいという人も利用できます。また、自宅で受講できますので、近くに親がいるという安心感があり、通うことに不安のある子どもにもよいでしょう。
塾・スクールの場合、月謝とは別に入会金・教材費・パソコンレンタル料がかかります。ロボットコースの場合はロボットレンタル料もかかります。
体験学習ができますので、塾・スクールや講師の雰囲気を体験してみて、子供に合うかを確認してみましょう。
家庭でも使えるプログラミング学習ツールを紹介
塾・スクールの教材は、家庭でも利用することが出来ます。
- Scratch
- 教育版レゴマインドストームEV3
- Ozobot
- Sphero
Scratch
子供のプログラミング教育の代表格がScratchです。無料で利用できるビジュアブルなプログラミングツールです。
動かす、音をならす、ずっとなどといったブロックを組み立てることで、ゲームや動画をプログラミングしていきます。視覚的に組み立てられるので、子供にも理解しやすいです。
ScratchJrという4~7歳向けのツールもあります。
教育版レゴマインドストームEV3
ロボットプログラミングキットです。
付属のロボットを組み立てて、パソコンやタブレットの専用ソフトで、ロボットのモータやセンサーをどう使うかをプログラミングします。
ロボットが付属するので、6万円と高額ですが、ロボットに興味のある子供にはおすすめです。レゴの製品なので、組み立てる楽しさもあります。
より簡単なレゴWeDo2.0というものもあります。
Ozobot、Sphero
レゴマインドストームEV3と同様にロボットプログラミングキットです。
こちらは組み立てる必要がなく、すでにあるロボットにプログラミングしていきます。
まとめ
必修化されたプログラミング教育の内容と必要な準備や塾・スクール、学習ツールについて紹介しました。
- 急速な情報社会の発展で、すべての職業にプログラミングが必要となりました。
- 小学校ではプログラミング言語自体を学ぶわけではなく、各科目を通じてプログラミング的思考を学ぶ。
- 学校の授業だけなら特別な準備は不要。
- 子供が興味を持つようなら塾・スクールに通わせるのもよい。ただし学校の授業の内容とは異なるので注意。
- 自宅でプログラミング学習するならScratchがおすすめ。ロボットならレゴマインドストームEV3がおすすめ。
なにより、子供がパソコンに触れる機会が多くなりますので、犯罪やいじめにあわないよう、インターネットのメリット・デメリットやSNSのマナー・ルールなど情報モラルを家庭で教育していくことが最も重要と感じます。
コメント